その言動がトラブルのもと?Webディレクターが押さえるべきコミュケーションの勘所
Web制作は、クライアントや代理店、デザイナーやエンジニア、ライター等、複数のメンバーもしくは組織が関わることになります。その役割も立場も、ときには言語も違う人たちのハブ的な存在となるのがWebディレクターです。
「聞く」「話す」「書く」といったコミュニケーション方法で、クライアントやスタッフのニーズや思いを翻訳し、各所に伝えなくてはなりません。そんななか、「正直、コミュニケーションって難しい…」と悩んでいるWebディレクターの方もいるのではないでしょうか。
そこで今回はWebディレクター歴14年、『失敗しないWeb制作 プロジェクト監理のタテマエと実践』(ワークスコーポレーション)の著書もある、みどりかわえみこさんが登場。Webディレクターが知っておくべきコミュニケーションの基本から、失敗しないためのコツまでを伝授していただきます。
目次
◆みどりかわえみこさんプロフィールWeb制作会社と企業のWeb部門を渡り歩いたのち、「情報の整理と企画」を軸に育児総合情報サイト、人材派遣会社求職サイト、旅行代理店のSNS、会員向け商品検索サービスなどを手がける。制作請負ではなく、要件定義から情報設計、制作ディレクション、運用までを見据えてプロジェクトマネジメントを行う。
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いい仕事をするために~挨拶、正しい敬語、所作は基本中の基本~
数多くのプロジェクトで、Webディレクターを務めてきたみどりかわさん。Webディレクターがまず注意すべきなのは、下記の3項目だと指摘します。
・正しい挨拶・所作を身につける
・しぐさのクセを直す
・話し方のクセを直す
基本ができていないと、社会常識のない人と思われる…ならまだしも、成果物までも低く見積もられてしまうこともあります。そうならないためにも、各項目をチェックしてみましょう。
正しい挨拶・所作を身につける
挨拶は、相手の目を見て笑顔ですれば、「お互い良い仕事をしましょうね」というポジティブな気持ちが伝わるもの。
これから良い関係性のもとで仕事するためにも、明るい挨拶を心がけましょう。たとえその数時間前までメールでいがみ合ってたとしても(笑)。
またお辞儀や名刺交換、エレベーターでのお見送りなどの所作も案外見られているもの。適当にやっていると、仕事も適当な人だと思われかねません。
しぐさのクセを直す
頬杖、身体や頭部をいじる、貧乏揺すり、足組み、ひとりごとなど…。自分では無意識に行っているクセが、相手に不快感を与えてしまっているケースもあります。ひとつでも思い当たるクセがあったら、意識して直すようにしましょう。
話し方のクセを直す
「えーっと」などの意味のない言葉、タメ口、過剰な敬語などにも要注意。とくに新人の場合、「敬語さえ使っていれば大丈夫」と思いがちですが、慇懃無礼という言葉もあるように、「〇〇していただけないでしょうか」「〇〇でございます」を連発すれば、誠意のない、薄っぺらい人だとも受け取られかねません。「〇〇をお願いします」「〇〇です」といった通常の丁寧語を使いましょう。
また要注意なのが、先輩や上司が必ずしも正しいしぐさ、言葉遣いをしているとは限らないということ。そのあたりは冷静な目でチェックして、無意識に真似たり、染まることのないようにしましょう。
この点は新人ディレクターのみならず、中堅以降のディレクターも時折振り返ることをおすすめします。
苦手な人が心がけるべきヒアリングの極意
・ミーティング前に目的は何かをよく考えて
・相手を質問攻めにしないで
・これはマスト!という情報を確実に得る
クライアントの意向を確認し、社内や制作スタッフに伝えるのがWebディレクターの仕事。しかし、肝心なことを引き出せていなかったり、制作のそもそもとなる情報をもらいそびれたり…。
そんなことが続けば、のちのち判断を誤り、要件が違ってきたり、納期に間に合わなくなる…なんてことにもつながりかねません。ここからは、失敗しないヒアリングのコツを見て行きましょう。
ミーティング前に目的は何かをよく考えて
ヒアリングの内容を事前準備していく
こちらの質問に対して、クライアントの返事がなかったり、判断を迫りたいのに無反応だったり…。そんな困ったことはありませんか?
そんなときは、たずねる側が『何を知りたいのか』『どんな答えをもらいたいのか』を押さえていない場合があります。まず、ミーティングの前には、そのミーティングの目的を明確にして。クライアントに何を聞いて、どういう情報を得るべきかを考えておきましょう。
ミーティング中も、相手に語りかける前に「で、何?」「私は相手に何をどうして欲しいの?」とセルフツッコミをすることが重要です。そうやって要点が絞れた状態で話をすれば、相手も回答が出しやすくなり、早く、明確な回答がもらえるようになります。
ミーティングの最初にたとえば「今日は〇〇についてヒアリングをさせてください」と趣旨を宣言するのも話に集中しやすくなり、効果的です。
相手を質問責めにしないで
相手の話をベースに引き出していく
聞き漏れがないようにと、質問項目をたくさん考えていって、とにかく質問しまくるという方がいるかもしれません。でも、病院の問診のように機械的に質問を浴びせられれば、聞かれる方もあまりいい気持ちはしないものです。
あらかじめ、これだけは聞かなくてはならない、というコアな部分だけ質問項目を考えて行き、あとは会話のなかから引き出して行くのがベストです。「聞くことメモ」を用意する人は一番大事!なことに○をつけるとよいですね。慣れもありますが、例えば『それは言いかえますとこういうことでしょうか?』という会話の返しワザのようなものを持っておくと、気持ちよい会話が続くでしょう。
ビジネス書の会話集には文例がたくさん載っています。また、上司などで話が上手な人の口癖をまねてみてもいいですね。
欲しい回答を想定して行くべき?
その際、ある程度どんな回答が欲しいかを想定して行く人もいるようですが、
例えば納期がぎりぎりで、『もう迷っている時間なんてない!』といったような場合。こちらの欲しい結論に持って行かざるを得ないことも正直、ありますよね。
でも通常のヒアリングでは、こちら側で仮説や回答をガチガチに用意すると、ついその結論に誘導してしまいがちです。そうすると相手も、本当は嫌なのに『YES』と言ってしまったりして、のちのちのトラブルの原因になることも。
やはり、ある程度の回答は想定しながらも、相手が考えること、話すことの余地を与えてあげるのがベストの方法かもしれません。
これはマスト!という情報を確実に得る
会話が苦手でもいいって本当!?
信頼関係を築くためにも、クライアントとの会話は重要です。よいコミュニケーションとは、クライアント側も、Webディレクターに対して、「自分の要求がしっかり話せた」「自分のやりたいことが分かった」「相手に自分たちのしていることを理解してもらえた」という満足感や安心感を得られるものです。そこで信頼関係も築かれるでしょう。
しかし話し上手な人にありがちなのが、「話しすぎ」「聞きすぎ」。
例えば、クライアントとの会話が盛り上がり、企業の理念や担当者の雄大な人生観なども聞きだしたとしましょう。クライアントは話したことによる満足感も得られて、期待も高まるわけですが、実際請け負ったのは、業務システムの一部で、短期的な関わり合いだった場合はどうでしょうか。
確かに、ヒアリングしたことが成果物に結びついていなければ、期待と出来上がったもののギャップが生まれてくるかもしれません。つまり、対・クライアントとのコミュニケーションは、その仕事のスケールとゴールをわきまえ、必要な情報を引き出し、お互いに何をするべきかを認識しあうことが基本中の基本。
話を盛り上げるのが苦手だったり、雑談が不得意であったりしても、基本を押さえれば良い仕事に結びつきます。
のちのちのトラブルのもと!Webディレクターのあるある実例3つ
専門用語に要注意!要望が主、技術は従の関係を意識して
クライアントのネットリテラシーはまちまち。実は専門用語が苦手だということも大いに考えられます。
最初のミーティングで、のっけから『想定ユーザーは何ですか?』『PVはどれくらいですか?』といきなり切り出したり、話題の技術やSNSの話題を提供したりしたことはありませんか?
クライアントさんは表面上は平静を装っていても、内心『自分は遅れているのかな?』『話について行けないかも』という強迫観念が生まれ、プロジェクトに対するモチベーションも下がってしまっているかもしれません。
また、クライアントのなかには『知らないと恥ずかしい』とばかりに、理解していないのにOKを出して、方向性にずれが生じてしまうこともあるかもしれません。
とはいえ、時には事業計画や成果物について、専門用語なしでは説明や提案ができないときもあります。そんなときは一体どうすればいいのでしょうか?
まず、ミーティングではクライアントの仕事の内容をよく聞くようにします。その後、『これから仕事をどうして行きたいのか?』『そのためにもWEBで何をしたいのか』を聞いていきます。そのなかで徐々に、クライアントのやりたいことを実現する道具のひとつとして、『WordPressというツールがある』『要件として提示されたWordPressとはこういう強みがあり、使うと費用面ではこうなる』等と説明して行けば、専門用語もすっと入りやすいのではないでしょうか。
あとは、例えば建築系のクライアントであれば、その道のプロですよね。その業界の知識に関しては当然のことながら私たちは太刀打ちできません。そのクライアントの話に興味を持ち、尊敬の念を持って話せば、信頼してもらえるようになります。そうやってお互いに知らないところを補いつつ、同じ目標に向かって協力し合うという関係が築き上げられるとベストですね。
「持ち帰ります」の危険!いつまでに回答するかを明確に伝えて
打ち合わせ中、自分では回答ができず、「持ち帰ります」と言うことはよくあります。でもほかの話をしているうちに、うっかり忘れてしまうことも。
「持ち帰ります」と言ったからには、『いつ』(本日夕方、今夜等)までに、『誰』(エンジニア、デザイナー等)に聞いて回答しますと伝え、必ず実行しましょう。
無視、スルーは禁物!先延ばし厳禁!返事ができない人は信用されない
何か質問をされたとき、もしくは「こんなことがあったんだ」といった状況をシェアしてもらった時など、「ふーん」と頭のなかで唱えるだけでスルーしてしまうことはありませんか?
最近はチャットツールでコミュニケーションをとるケースも増えており、グループチャットでは「誰かが返事をしてくれるだろう」とついスルーしてしまうことも。
そういうときは、ディレクターが率先してキャッチアップしてください。ただしディレクターのみがキャッチアップする状況も負荷が偏るので、誰かが返事をするというルールを決めておくのもいいと思います。
また、状況説明をスルーすると「この人には情報を与えても効果が無い」と判断され、重要な情報がストップしてしまいトラブルにつながるリスクもあるのです。
まとめ
コミュニケーションの職業ともいわれるWebディレクター。仕事を成功に導くためには、挨拶やしぐさ、日頃のコミュニケーション習慣を見直すことが大切だということが分かりましたね。
ちなみに、数々のプロジェクトを成功へと導いてきたみどりかわさんですが、最初からすべてが順調であったわけではないそう。新人の頃は失敗も多く、上司に怒られてばかり。でもその悔しさをバネに、コミュニケーションスキルを磨く努力を重ねました。そのためか、職場を変えた途端、力が発揮できるようになったそうです。
ベテランとなった今も、日々努力を怠らず、謙虚に我が身を振り返る姿勢も印象的でした。
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