ゲーム製作における「ローカライズ」とは?

ゲーム製作における「ローカライズ」とは?

「ローカライズ」とは、製品やサービス開発における作業工程の一つ。この記事では、ゲーム製作における「ローカライズ」とはどのような作業か、ローカライズを仕事にする方法などについて解説します。

目次

ゲーム製作における「ローカライズ」とは 

ゲーム製作における「ローカライズ」とは、ゲーム内のセリフやナレーションを別の言語に翻訳したり、他国の文化や宗教に合わせて表現を変更したりして、一つのゲームを世界中の人々がプレイできるようにすることです。ゲームの世界観を保ちつつ、外国の常識に寄せていかなければならないため、幅広い知識と発想力が求められます。

ローカライズ対象の言語は、主に英語と中国語が対象。ヨーロッパ市場で影響力を持つ「FIGS(フランス語・イタリア語・ドイツ語・スペイン語)」に対応しているゲームも多くあります。

企業がゲームをローカライズするメリットは売上を拡大できること。特に日本は人口減少により、今後国内のマーケットは縮小していくことが予想されます。外国進出を行わなければ売上を大きくしていくことはできないため、今後より重要性が高まっていくでしょう。

翻訳とローカライズの違い

ローカライズの作業には翻訳作業を含んでいますが、単なる「翻訳」の仕事とローカライズは微妙に異なります。翻訳は基本的に原文の意味・内容を変えず、他の言語に変換する作業です。一方ローカライズは、言語という表面的な部分だけではなく、文化や慣習を考慮して表現や設定そのものを変更することもあります。

ローカライズの具体的な作業内容

ローカライズには、翻訳以外にもさまざまな作業工程があります。ここではその具体的な作業内容を解説します。

ファミリアライゼーション

ファミリアライゼーションとは、ゲームの世界観やシステムを理解するための作業です。シナリオや設定資料を熟読するほか、実際のゲームプレイを通してオリジナル作品への理解を深め、ローカライズの基盤を作ります。

ファミリアライゼーション(Familiarization)は、英語で「慣れ親しませること・熟知させること」を表す言葉です。ローカライズの担当者はゲームの世界観やキャラクターの心理を熟知した上で翻訳する必要があります。

カルチャライズ

カルチャライズとは、各国の文化・風習に合わせてゲームの表現・ビジュアルなどを変更する作業です。例えば日本では主食に米を食べるのが普通ですが、ヨーロッパでは小麦系の食品を食べることが多いため、カルチャライズでは「米」の表現・ビジュアルを「パン」に変更します。自国とは異なる文化をもつ外国の人々が自然とゲームの世界に入り込めるよう、細かな工夫が必要です。

また、他国のタブーに配慮したカルチャライズも行われています。例えば日本では過度にグロテスクな描写が規制されていたり、イスラム教を信仰する地域では飲酒が禁止されていたりと、注意すべきポイントはさまざまです。特に宗教や神に関わるゲームを扱う場合や、セリフにスラング・流行り言葉が使用されている場合は、それが他国においても適切かどうか、よく考える必要があります。

グロッサリー&スタイルガイドの製作

グロッサリーとスタイルガイドは、翻訳者ごとの癖を失くし、統一感のある訳を作るためのガイドラインです。グロッサリーにはそのゲームで頻繁に使用される単語・訳語がまとめられており、スタイルガイドにはフォント・ページ設定・カタカナ表記などの基準が明記されています。

翻訳作業は基本的に複数人で行うため、そのままでは訳者ごとにずれが生じ、修正に手間がかかることも。しかしグロッサリーとスタイルガイドがあれば、ある程度の表現やフォーマットを統一することが可能です。

対象言語への翻訳

各言語に合わせた表現・設定が決まったら、いよいよ翻訳作業です。翻訳は翻訳会社に依頼する方法と、ゲームを製作している社内のチームに任せる方法があります。可能であれば、ファミリアライゼーションを行い、オリジナルゲームに精通している社内の人間が翻訳した方がよいでしょう。

翻訳の際は、直訳するのではなく、セリフやナレーションの意味を汲み、翻訳先の言語で一から文章を作るという意識が大切です。原語では省略されている言葉も、必要であれば付け足していきます。

また、翻訳は複数人で行うことが多いため、訳者によって質の差が出ることもあります。たとえ一部であっても、不自然な表現はゲーム全体のクオリティを下げてしまうため、統括者は入念なチェックが必要です。

音声の吹き込み

ボイス入りのゲームである場合は、他言語に合わせて音声の吹き込みを行うこともあります。言語によってセリフの尺や間のとり方が異なるため、その点にも注意が必要です。

インターナショナライズ

ゲームや電化製品の初期設定を行う際には「言語選択」のパネルが表示され、選択した言語が製品のUIに反映されます。インターナショナライズ(I18N)は、ゲーム内でさまざまな言語を選択・使用できるように、システムを構築する作業です。日本のみの製品であれば、ひらがな・カタカナ・漢字など、言語ではなく表記に関する選択肢をプログラミングすることもあります。

プレイチェック

翻訳・インターナショナライズが終わったら実際にゲームをプレイし、ローカライズに異常がないか確認します。この工程までがゲームにおけるローカライズ作業です。単純に翻訳をするわけではなく、さまざまな工程を経て各国に最適化されたゲームが届けられます。

ローカライズの知識・スキルを身につけるには

ローカライズを仕事にしたいという方は、まず知識・スキルを身につけましょう。ローカライズに必要なのは、主に翻訳元・翻訳先の言語能力と、異文化に関する知識です。スキルアップのためには、学校に通ったり経験を通して知識を得たりとさまざまな方法が考えられます。

翻訳スクール・専門学校に通う

翻訳スクールや翻訳の専門学校に通えば、専門スキルを身につけることができます。ゲーム以外にも映画の字幕翻訳など、さまざまなコースから選ぶことが可能です。広く言語について学びたい方は大学を、翻訳に特化した勉強がしたい方はスクールや専門学校を選ぶとよいでしょう。

インディーズゲームの翻訳プロジェクトに参加する

ボランティア、あるいは安価の報酬で、インディーズゲームの翻訳プロジェクトに参加するという手段もあります。スキルをつけるには、実践が一番の近道です。十分な報酬を得ることはできませんが、無償で経験を得られるというのはメリットでしょう。

海外生活を経験してみる

海外留学、あるいは移住によって海外生活を経験することで、外国の文化を感じることができます。適切なカルチャライズを行うためにはネットや知人から情報を仕入れることも必要ですが、その国の常識やルールを肌で覚えておくと、より現地の人に近い感覚でゲームを作ることができるため便利です。

ローカライズを仕事にするには

ローカライズを仕事にする手段としては、知識やスキルを身につけた後、ゲーム関連の会社に就職するのが一般的です。実務経験を積んだ後は、フリーランスとして独立するという道もあります。

ゲーム会社に就職する

まず、ゲームを製作している会社に就職し、自社製品のローカライズを担当するという道があります。外部委託やフリーランスとは異なり、チームで一つのゲームを作り上げる達成感が魅力的です。入社直後は簡単なチェック業務などを任される可能性もありますが、経験を積んでいけばローカライズを担当することもできるでしょう。

日本語が堪能な人であれば、日本のゲーム会社に就職して海外向けにローカライズを行うか、海外のゲーム会社に就職して日本向けのローカライズ(翻訳)を行うか、という二つの道があります。自分の能力や希望に応じて選ぶようにしてください。

ゲームの翻訳会社に就職する

ゲーム会社とは別の翻訳専門会社に就職し、外部からの委託業務として翻訳を行うという道もあります。ゲームの翻訳がしたいという方にはおすすめですが、カルチャライズなど、ローカライズに関わる幅広い業務を担当したい場合はゲーム製作会社に就職した方がよいでしょう。

フリーランスとしてローカライズを担う

会社で経験を積んだ後は、自分の好きな仕事を請け負うフリーランスになるという道もあります。求人サイトやクラウドソーシングサイト、フリーランス専門の就職エージェントサービスなどを利用して、条件に合った案件を探してみてください。就職エージェントサービスでは、希望条件を伝えるだけで案件を探してもらえるため、個人で営業をかける必要がなく便利です。

レバテッククリエイターで扱っているローカライズ案件は以下のリンクから確認することができます。気になる方は確認してみてください。

ローカライズに向いている人

ローカライズの業務に向いているのは、以下の要素を含む人です。

言語能力が高い

言語能力が高い人はローカライズ、特に翻訳の工程に向いています。ゲームのローカライズで必要となる言語能力とは、オリジナルのテキストを理解するための読解力と、その内容を別の言語に訳すための表現力です。

原語と翻訳先の言語、両方の言語を習得していることが望ましいですが、どちらかと言うと翻訳先の言語の方が重要でしょう。なぜなら、原語を読むには辞書と基礎の文法知識があればよいですが、流暢に訳すためには翻訳先の言語に精通している必要があるからです。

異文化への理解がある

ローカライズはただ翻訳するだけではなく、その国や地域の文化・風習・宗教などを考慮してゲームを改訂する作業です。異文化への知識・理解が深い人は、ローカライズに向いていると言えるでしょう。

例えばテストの採点をする際、日本ではマルが正解ですが、アメリカではマルが不正解を表します。記号一つで意味が逆転してしまうほど、文化の差とは大きいものです。ローカライズの担当者には、こうした違いをしっかりと理解・尊重して仕事に取り組む姿勢が求められます。

ゲームが好き

ゲームの製作に関わるということから、ゲームが好きな人もローカライズに向いています。また、ゲームのシステムや、「HP(ヒットポイントまたはヘルスポイント)」「MP(マジックポイント)」「EXP(経験値)」などのゲーム用語に詳しい人は、すんなりと業務に入っていけるため、有用な存在です。

まとめ

日本には『ファイナルファンタジー』『ドラゴンクエスト』などの大ヒットシリーズが存在し、これらのゲームは海外でも多くの人々に愛されています。自国のゲームを外国でプレイできるようにする「ローカライズ」は、今後のゲーム業界を支える重要な仕事です。興味のある方は、まずは第二言語の習得から始めてみてはいかがでしょうか。

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